禁止カード
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禁止カード(Banned Card)は、構築またはエターナルにおいて、デッキ(メインデッキおよびサイドボード)に1枚も入れてはいけないカードのこと。
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解説
スタンダードセットの発売とプロツアーなど大会の開催日程と合わせ、定期(約2~3ヶ月ごと)に禁止カードが告知される。
禁止カードは大抵、あまりに強力なものや使い勝手の良すぎるものに対して指定される。それらの横行によりデッキの幅を狭め、ゲームをつまらなくしてしまうからだ。実際に強いカードを使ったたった1種類のデッキが大きな大会での上位を半数以上占めたことも何回もあり、そうなったときも含めてDCIが危険だと思われるものを押さえていくのである。
また、強さとは関係なしに、どんなデッキにも入るカードというのも禁止される理由の1つになる。どのカードを使おうかと頭を悩ませてデッキを練り上げるのもマジックの一部なので、考えるまでも無くデッキに入ってしまうカードがあっては困るのだ。あくまで皆に楽しんでもらうためにしていることなので、あっけらかんに決められてはいないということを忘れてはいけない。
- 禁止カードはフォーマットごとに定められている。あるフォーマットで禁止でも、別のフォーマットでは問題なく4枚使えたりする。その完全なリストは各フォーマットの項を参照のこと。
- リミテッドでは、禁止カードリストが存在しない。ウルザ・ブロックのリミテッドでは、禁止カード発効後も手札を使い切った瞬間に意外な授かり物/Windfallなどというプレイがしばしば見られた。
- ただし、マジック・イベント規定と総合ルールの別途規定により、アンティに関するカードと策略カードに収録されているセットを用いて行われた認定大会は認められない(策略カードはカジュアルイベントに限り使用が認められていた)。そのため、マジック25周年記念グランプリのサイドイベントとしてアンリミテッド(ベータ)を用いたロチェスター・ドラフトでは、「アンティに関するカードはピックした時点にカードプールから除外」という特別ルールがあった。
- 師範の占い独楽/Sensei's Divining Top(エクステンデッド・モダン・レガシー)、第二の日の出/Second Sunrise(モダン)、Shahrazad(エターナル)のような、適正なプレイを行っていてもトーナメントの進行を遅延させる可能性の高いカード、Chaos Orbやアンティ関係のような現在のマジックのゲーム性からかけ離れていると判断されたカード、策略カードのように通常のトーナメントで用いることを想定していないカードなど、強さ以外の理由でも禁止カードに指定される場合もある。
- 日本産のカードゲームの中には併用禁止といった種別の禁止方法もあるが、マジックの禁止カードは「メインデッキおよびサイドボードに入れてはいけない」という単純な禁止のみである。
- 例外として、石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mysticがスタンダードで禁止された際、イベントデッキである消耗戦/War of Attritionをそのまま使用する場合に限り使用が認められていた[1][2]。
- 霊気池の驚異/Aetherworks Marvelがスタンダードで禁止された当時、「併用禁止」など禁止カード・制限カード以外の規制形式も検討されたが、混乱を招く懸念があり見送られた。
- 一度ローテーション落ちしたタイミングで、禁止カード指定は解除される。
- かつてミラディン・ブロックが使えるスタンダードにて禁止指定を受けたダークスティールの城塞/Darksteel Citadelだが、後に基本セット2015で再録された際には引き続き禁止とはなっておらず、通常通り4枚使用可能。
- 旧エクステンデッドでも、ローテーションで第4版が落ちるまで禁止指定を受けていた惑乱の死霊/Hypnotic Specterが、のちに第9版再録された際には禁止指定にはなっていなかった。
ウィザーズ社の対応・スタンス
- 禁止カードを出すのは、いったん発売した商品に欠陥があったと認めることになると開発部は考えており、あまり出したいものではないらしい。
- 禁止カードを連発してしまったウルザ・ブロックの件で、R&Dの開発スタッフが社長室に呼ばれて叱られたという逸話がある[3]。
- アメリカ国内ではスタンダードの禁止カードをブースターパックから引き当てた場合、そのカードをウィザーズ社に郵送することでブースターパック1つと交換してもらえるサービスが実施されていたことがある[4]。「使えないカードを引いても仕方が無い。パック代を返せ」という合理主義の国民らしいクレームに応えた形である。
- 非常に強力なカードが台頭すると、禁止カード入りを阻止するためか、露骨な対策カードが作られる場合もある。リシャーダの港/Rishadan Portに対するテフェリーの反応/Teferi's Response・サーボの網/Tsabo's Webなどがその一例。
- コンボに対する基準として、モダンでは3ターン以内で、レガシーでは2ターン以内で勝利を決めてしまうデッキを弱体化するため禁止カードに指定している[5][6]。
- 2015年時点におけるデベロップ・チームの目標は「スタンダードにおける禁止カードを10年に1枚だけにすること」であり、調整の甲斐あってかスタンダードにおいて禁止カードが指定されることは稀であった。その一方でモダンのような広いフォーマットに対してそのような数値的な目標は何も設定されておらず、スタンダードのデザイン空間が最優先されているため、しばしば印刷されてすぐに環境を支配してしまうようなカードが登場することもある[7][8]。
- 2017年にはスタンダード環境に対するスタンスが見直され、ゲームバランスを取るために新たに禁止カードを制定することになった。それまではトレイリアのアカデミー/Tolarian Academyや精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptorのように明らかに壊れていて、公式大会をそれ一色で染め上げるようなカードでなければ見送られるのが通例であった。しかしそれらを比較対象にするのは「禁止カードを出すためのハードルが高すぎ」であり、環境を健全に保つための判断を妨げていたのである。特定のデッキを完全に抹殺するような方法ではなく、特定のカードが禁止にされてもユーザーが所持している他のカードが有用性を保つような方法で禁止を行う方針だが、これはモダンにおける強力すぎるデッキを弱体化させるため禁止措置と似た手法である。また「出来る限り禁止カードを出したくない」という方針そのものはこれまでと変わっていない[9][10]。
禁止カードに纏わる話
- 最初に日本語版が発売された第4版には非常に多くの禁止カードが含まれていた。これらは反則的なほど強いが、トーナメントで使えないので本当に紙くず扱いだった。当時のカードショップやデュエルスペースの「カード捨て箱」(不要なカードを初心者などに提供する目的で設置されていた)にはチャネル/Channel・露天鉱床/Strip Mine・黒の万力/Black Viseが山の様に捨ててあったものである。
- 誰もがウルザ・ブロックの時代までは「まさかスタンダードで禁止カードは出ないだろう」とたかをくくっていたが、最終的には10枚もの禁止カードが追加された。中には波動機/Fluctuatorの様に「そんなに強いか?」というカードまで禁止されたために、「スタンダード環境でも、いつどんなカードが禁止になるのかわからない」という疑心暗鬼が広がった。これによってトレードなどで「このカードはもうすぐ禁止になるらしいよ」などと言って価値を暴落させて有利に駆け引きをしようとするシャークが後を絶たなかった。
- 「禁止になる」と噂のあったカードは数多い。意志の力/Force of Will、ジェラードの知恵/Gerrard's Wisdom、リシャーダの港/Rishadan Port、梅澤の十手/Umezawa's Jitteなど。特にゴブリンの太守スクイー/Squee, Goblin Nabobには禁止の噂が絶えず、4枚揃えるのにかなり勇気が必要とされた。大枚をはたいたり、キツいトレードの果てに揃えたりした瞬間「禁止」などと言われたらたまらないからだ。しかし、これらは禁止カードになる事なくスタンダード落ちを迎えることとなった。
- ウルザ・ブロック以降しばらくスタンダードの禁止カードは出なかったが、ミラディン・ブロックによって親和デッキが横行し、5年ぶりに多くの禁止カードが出された。そしてその6年3ヶ月後のミラディンの傷跡ブロック期、精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptorと石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mysticがスタンダードでの禁止カードに書き加えられた。
- その後は5年7ヶ月の間スタンダードで禁止カードが出ることはなかったが、禁止カードへのスタンスが見直された2017年以降に多くの禁止カードが出された。特にカラデシュ・ブロックには5枚のスタンダード禁止カードが含まれていた(2018年1月現在)。
- Magic Onlineが十分普及した現在、Magic Online内のメタゲームのデータが禁止カードの制定に活用されている。
- アモンケットより、スタンダードでは紙での発売日よりも先行してMagic Onlineでイベントが行われていたが、そこでのメタゲームを受けて最新セットの公式発売日の前に禁止カードが追加されるという、これまでにない指定が行われた。その経緯は、守護フェリダー/Felidar Guardian項目を参照。
その他
- 日本のマジック・コミュニティでは、特定プレイヤー(主に渡辺雄也と八十岡翔太)の活躍に対する(冗談交じりの)敬意として、「(プレイヤー名)が禁止カード」をネタにすることがある。
- これは、2012年にグランプリマニラ12を勝った渡辺雄也がMartin Juzaに「禁止が出るとしたら、思案/Ponderと秘密を掘り下げる者/Delver of Secretsどっちかな?」と言ったら「お前が禁止でいいよ」と返されたのが発端だとか[11]。
- 2016年まで、禁止カードの改訂は「スタンダードで使用可能なセットのプレリリース後の月曜日」(年ごと4回)に行われていたが、2017年1月より禁止カードの改訂は「プレリリース後の月曜日とプロツアーの5週間後」(年ごと8回)と変更された[12]。ただし、「改訂回数が多すぎ」と多くのプレイヤーから不評だったため、2017年6月より、禁止カードの改訂は「スタンダードセットとプロツアーなど特定大会と合わせ、適当なタイミング」と変更された。[13][14]
- 非常に稀なケースだが、通常の禁止改訂時期以外の改訂で禁止されたカードも存在する。その経緯は当該項目を参照。
- カジュアルプレイの域になるが、グランプリのサイドイベントなどで「禁止解除大会」を行っていることがある。「禁止解除モダン」や「禁止解除レガシー」などで、その環境では想像もできないような状況を見ることが出来る[15][16]。
脚注
- ↑ STANDARD BANNINGS EXPLAINED (magic.wizards.com、Aaron Forsythe、2011年6月20日)
- ↑ スタンダードの禁止に関する声明 (マジック日本公式、上記記事の翻訳)
- ↑ Eighteen Years (Daily MTG、Make Magic、英語)
- ↑ DCI Banned and Restricted List Announcement (邦訳) (WotC、1999年3月1日告知、同年4月1日発行の禁止・制限リスト改定告知)
- ↑ WELCOME TO THE MODERN WORLD (Latest Developments、Tom LaPille、2011年8月12日)
- ↑ モダンの世界へようこそ (マジック日本公式、上記記事の翻訳、米村薫訳)
- ↑ DEVELOPMENT RISKS IN MODERN (Latest Developments、Sam Stoddard、2015年5月22日)
- ↑ モダンにおけるデベロップのリスク (マジック日本公式、上記記事の翻訳)
- ↑ STANDARD (Latest Developments、Sam Stoddard、2017年1月13日)
- ↑ スタンダード (マジック日本公式、上記記事の翻訳)
- ↑ 渡辺雄也のTwitter (2012年6月18日)
- ↑ 2017年1月9日 禁止制限告知(News 2017年1月9日)
- ↑ 2017年6月13日 禁止制限告知(News 2017年6月13日)
- ↑ 2017年8月28日 禁止制限告知(News 2017年8月28日)
- ↑ サイドイベント・「禁止解除レガシー」上位入賞者デッキリスト(カジュアル) (マジック日本公式、グランプリ千葉15)
- ↑ 禁止解除モダン 全デッキリスト(晴れる屋、グランプリ千葉16 2016/11/25)
参考
- All Banned Cards—Ever! : Daily MTG : Magic: The Gathering (Daily MTG、Magic Arcana、英語)
- 2009年3月19日の時点で、禁止されたことがあるカードの一覧(Magic Onlineのみで禁止されたカードを除く)。斜体は再録禁止カード。
- Standard Bannings Explained/スタンダードの禁止に関する声明 (Daily MTG、Feature Article、文:Aaron Forsythe)
- A Brief History of the Standard Banned List(2015年7月13日 Magic Arcana Michael Yichao著)
- 制限カード
- From the Vault:Exiled
- トーナメント用語