誘発忘れ
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誘発忘れ/Missed Triggerとは、誤って誘発型能力が誘発することを処理せずにゲームを進めてしまった時の処理。
以下の内容は、2021年2月5日発効のマジック違反処置指針を元に記述する。
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原則
ある誘発型能力のコントローラーが、その能力が誘発すべき時点を超えてその処理をしていなかった場合、誘発忘れとなる。ただし、それが故意であった場合は故意の違反に該当する。
誘発型能力は多数存在するにもかかわらず実体が存在しないため、それを忘れてしまったことに厳しい懲罰が与えられるべきではない。だが、自分に有利な誘発型能力を覚えておくことはゲーム上の技術でもあるため、プレイヤーには対戦相手の誘発忘れを指摘する義務はない(指摘してもよい)。
- 「対戦相手に指摘する義務がない」のはあくまでも誘発忘れに限った話であり、それ以外のルール違反に気付いた場合には指摘する義務がある。もし、その他の違反に気づいていながら有利を得る目的で故意に見逃した場合、それは「故意の違反」として失格となりうる。
処理
ルール適用度(REL)が「一般」である場合、一般ルール適用度(REL)用ジャッジ法に従って処理される。誘発忘れに気付いた場合、それが「~してもよい」という類の選択を含むものならば選択しなかったものとして扱い、そうでない場合は即座に処理を実行する。また、ある行動が複数回忘れられていた場合には、そのターン中のものだけを実行し、それ以外は無視する。
RELが「競技」や「プロ」である場合、マジック違反処置指針に従って処理される。「競技」や「プロ」においては、誘発型能力が誘発した場合、「ある時点」(以下詳述)までに誘発したことに「気付いているという意思表示」をしなければならない。
意思表示のタイミング
- 対象を取ったり(「対戦相手1人を対象とする」を除く)、モードを選んだり、その他その能力がスタックに置かれる時点でコントローラーが選択すべきことがある誘発型能力
- 他の行動をとるまで(あるいは優先権をパスするまで)に選択をしなかった場合、「忘れた」ものとみなす。
- ただし、対戦相手1人を対象とするものは、2人対戦の場合は対象の選択肢が1人しか存在しないため、宣言する必要がない。
- 「視覚上の変化」を伴う、あるいは解決時に何らかの選択をするもの
- その能力が解決しなければ取れない行動(フェイズ・ステップを移行する、ソーサリー呪文を唱えるなど)を取るまでに告知しなければ、「忘れた」ものとみなす。
- インスタント呪文を唱えたり起動型能力を起動したりすることは解決しなくてもできるため、これらの行動を取っても忘れたとは必ずしもみなされない。
- 「視覚上の変化」とは、「プレイヤーに何が起こっているかまたは何が戦場にあるかがわかるような、領域変化やカウンターの追加、ライフの変更など」という意味。
- 例:聖トラフトの霊/Geist of Saint Traftで攻撃した後、特に何も告知することなく戦闘ダメージ・ステップに移行しようとした場合、トークンを戦場に出す誘発型能力を忘れたものとみなされる。ただし、「合わせて6点です」のような、暗にトークンの存在を意図したような発言を含んでいれば、それは忘れていないと考えられる。
- ゲームのルールを変更するもの
- それが実際に効果を及ぼす時点で宣言しなかった場合、「忘れた」ものとみなす
- 例:紅蓮心の狼/Pyreheart Wolfが攻撃したときの誘発型能力は、対戦相手がブロック・クリーチャーを1体だけ指定しようとした際に、「紅蓮心の狼の能力でそれはできない」と指摘すれば、忘れてはいないと判断される。
- 視覚的効果を伴わないもの
- その効果が視覚的変化を及ぼすとき、またはそのときまでに宣言しなかった場合、「忘れた」ものとみなす
- 遅延誘発型能力を生み出すだけの誘発型能力は、自動的に解決されるものとする。ただし、その遅延誘発型能力が解決する際には、上記の手順に従う。
- 呪文や能力のコピーを作り出すだけの誘発型能力(ストームなど)は、自動的に解決されるものとする。ただし、そのコピーを解決する際に解決し忘れた場合には、「忘れた」ものとみなす。
誘発忘れに気付いた場合の処理手順
- オーラが戦場に出たことによる誘発型能力で、そのオーラがつけられたパーマネントにのみ効果を及ぼし、視覚的な影響を伴うものであった場合、それを即座に解決する。
- その能力がオブジェクトの領域の変更を伴う遅延誘発型能力であった場合、対戦相手はその能力を次にプレイヤーが優先権を得るときに解決するか、次のフェイズの開始時にプレイヤーが優先権を得るときに解決するかを選ぶ。
- 誘発によって生成される効果の持続時間がすぎている場合、あるいは誘発すべき時点が「ちょうど1ターンよりも前」である場合、そのままの状態でゲームを続ける。
- 「ちょうど1ターンよりも前」とは、前のプレイヤーのターンにおける今現在のステップ・フェイズよりも前であることを意味する。
- いずれにも該当しない場合、対戦相手が、その誘発型能力をスタックに置くかどうかを決める。スタックに置く場合、その忘れられていた能力を、スタックの該当する場所またはスタックの一番下に置く。ただし、本来誘発すべき時点で存在しなかったオブジェクトを含む選択を行うことはできない。
- 例:誘発型能力がクリーチャーを生け贄に捧げるものである場合、誘発すべき時点で戦場に出ていなかったクリーチャーを生け贄に捧げることはできない。
懲罰
RELが競技やプロの場合、忘れられた誘発型能力がそのコントローラーにとって一般に有害であると考えられ、かつその能力が自身がオーナーであるカードによって生じた場合、警告の懲罰が与えられる。
対称的能力(吠えたける鉱山/Howling Mineなど)であれば、誰が影響を受けるかどうかによって有害かどうかを判断する。
対戦相手は誘発忘れを指摘する義務がなく、また指摘しなかったとしても「違反の見逃し」や「故意の違反」の懲罰が与えられることもない。
その他
- 日本選手権07の予選では、否定の契約/Pact of Negationを唱えた次のアップキープでマナを支払わずカードを引いてしまったため敗北になってしまったケースが絶えなかった。現在のモダンでもこのような事態がたまにある。
- これはルール違反による敗北ではなく、否定の契約の効果による敗北である。ただしこの処理については現在はルールが変更されている。
- 2012年ごろより、頻繁に誘発忘れについてのルールは変更されている。2012年時点でのルールは失効能力を参照。
- 2019年1月の変更以前では、「そうしなかった場合の処理があればその処理を行う」とされていた。上記の契約コストの支払い忘れは、変更以前では「支払わなかった場合、このゲームに敗北する」という処理があったので即座にそれが実行されていたのである。
- 現在では「アップキープにマナを支払う。そうしなかった場合、このゲームに敗北する」という能力自体をスタックに乗せるかどうかを対戦相手が選択する。これにより自動的に敗北、とはならなくなったが、マナが足りない状況で誘発忘れに気づいて能力がスタックに乗せられた場合、支払うことができずに敗北、ということもありえる。
- 同じく2019年1月の変更以前では、有害な誘発忘れで警告が出るかどうかは「その能力のコントローラーであるかどうか」だけで判断していた。そのため、対戦相手がオーナーであるThe Tabernacle at Pendrell Valeが誘発したことを忘れて警告、さらに上記の「しなかった場合の処理」に該当するため、クリーチャーが全滅、ということも起こりえた。
- 現在では、上記の誘発型能力は対戦相手がオーナーのカードに由来するものなので、このケースでは警告は出ず、改めて誘発型能力がスタックに乗った時にマナを払うかどうか選択する。
解説記事
- 9月20日ポリシー変更について、プレイヤーが知っておくべきこと(mtg-jp.com)
- 〔誘発忘れ〕の更新について(mtg-jp.com、上記記事に記載されているルールからの改定内容について)
- 誘発忘れの話、再び(鈴木健二の個人ブログにおける解説)