ムラガンダ/Muraganda
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− | '''ムラガンダ'''/''Muraganda'' | + | '''ムラガンダ'''/''Muraganda''は、[[多元宇宙/Multiverse]]に存在する[[次元/Plane]]の一つ。初出は[[未来予知]]で、[[プレインチェイス]]、[[統率者 (カードセット)|統率者]]([[貪食と増強/Devour for Power]])、[[機械兵団の進軍]]でも世界の様子を垣間見せた。[[霊気走破]]で舞台の一つとなり、本格的な登場を果たした。 |
==解説== | ==解説== | ||
− | + | ムラガンダは生命と自然のままの魔法に溢れる、原始的な次元だ。とはいえ、ずっとそうだったわけではない。遠い過去のある時点で――今を生きる者の記憶にはないが、生存者が彫り、その子孫が維持してきた[[ムラガンダの印刻/Muraganda Petroglyphs|印刻]]が記録するところによれば――ムラガンダ全土を支配する次元規模の文明が魔法を発見し、その後崩壊したのだ。この次元の月は粉々に砕け散り、今日に至るまで破片が降り注いでいる。 | |
− | + | 月の破片の落下が沈静化し、生存者たちが集団や部族や王国を形成するにつれて、ムラガンダは何世代にもわたって変わり続けてきた。月の破片の落下、[[#軟泥/Ooze|軟泥/Ooze]]、文明崩壊時に解き放たれた自然のままの魔法、その他多くの最初の惨禍の余波のために、ムラガンダは今日見られる姿となった――緑豊かな密林、凶暴な生命、狩り尽くされた遺跡、自然のままの容赦なき風景から成る、活気に満ち、力強く、原始的な次元だ。かつてこの次元を支配していた古き文明の面影は寂れた遺跡の中に見ることができるが、それらはほとんど埋もれてしまっている。新たな文化や文明が魔法を全力で使うすべを再び学んだ、この次元の新しく原始的な時代の下に。 | |
− | + | ==イベント== | |
+ | ===ギラプール・グランプリ=== | ||
+ | ムラガンダは[[アヴィシュカー/Avishkar]]、[[アモンケット/Amonkhet]]とともに、[[ギラプール・グランプリ/The Ghirapur Grand Prix]]の第二回大会の舞台となった。 | ||
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+ | グランプリのムラガンダ横断ステージは、選手たちが経験する中でおそらく最も危険なものとなるだろう。その風景を特徴づけるのは、露出した[[力線]]や月の破片や噴火する火山にざわめく荒々しく進化し続ける地形、既知あるいは未知の巨大な野生生物、好奇心旺盛な現地の文化だ。この次元はアモンケットが同意したようにはレースを受け入れておらず、肉体が感染症を攻撃するかのような反応を続けている。 | ||
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+ | レース開始の一年前、アヴィシュカーからムラガンダに先遣隊が派遣された。この遠征隊は四部門(外交、建設、保守、保安)に分かれており、ムラガンダじゅうで――時には文字通りに――道を切り拓き、自然界を動揺させた。アヴィシュカー代表団は支配勢力である[[#サウリド独裁政権/The Saurid Autocracy|サウリド独裁政権/The Saurid Autocracy]]から、建設用地がそうしてよい場所であるとの保証を得ていたものの、外交チームが結んだ条約は地図上の条約に過ぎず、地形や獣や軟泥、そこに住む無数の集団との条約ではないことを、保安チームと保守チームは突き止めた。実際、この独裁政権がアヴィシュカーと結んだ協定は、幾分か巧妙な政治的策謀だった。その地役権と協定を利用して、独裁政権はレースのルートに沿って自らの国境を押し広げ、インフラと技術の交流を確保し、この次元の「代弁者」としての主要な地位を確立したのだ。とはいえアヴィシュカーは最近、最も強大な魔道士集団との交渉においてゆっくりとではあるが着実な外交的進展を見せており、最初の協定における特定の欠陥を突き止めることは確実だ。 | ||
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+ | ムラガンダでのレースは、この次元の最も美しく最も容赦ない環境を巡る浮かれ騒ぎのツアーに出場チームを連れていく。珊瑚礁の穴や天を突く間欠泉の上に吊るされた危険なコースから、古の密林の緑壁を突き抜ける狭い森の回廊まで、ギラプール・グランプリのムラガンダ・パートはそれまでにないほど選手たちを試すことになる。アモンケットの呪われし広大な砂地も、彼らにとっては夢のように思えることだろう。ここムラガンダで選手たちが出会うのは、歩く世界の軟泥、自然のままの魔法で歪められた[[恐竜]]、そしてサウリド独裁政権が受諾した条約の条項には署名も同意もしていない恐れ知らずの略奪者たちだ。 | ||
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+ | ==組織== | ||
+ | ムラガンダは自然のままの生命で満ちた原始的な次元かもしれないが、他の次元と同じように文明は育っている。ムラガンダでは人型種族が隆盛し、その祖先が魔法や金属を見出して以来初めて権力を手にしている。[[#サウリド独裁政権/The Saurid Autocracy|サウリド/Saurid]]は密林に刃を振るい、荒野から王国を切り拓いている。他の組織形態――[[ドルイド]]の修道院、魔道士団、死せる神を崇める都市教団、内部異邦人の次元循環国家――も権力を競い合っている。ムラガンダの文明は、この次元の特徴たる凶暴な生命と同じように、原始的で残忍で勝者総取りである。 | ||
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+ | ===サウリド独裁政権/The Saurid Autocracy=== | ||
+ | この次元で最も強大な国家は'''サウリド独裁政権'''/''The Saurid Autocracy''という名の王国で、'''サウリド'''/''Saurid''――恐竜の人型種族――と、サウリドが'''柔皮'''/''Softskin''と呼ぶ[[人間/Human]]の臣民から成る。サウリド社会は厳格なカースト区分によって階層化されており、広大で入り組んだ社会ピラミッドの頂点に、支配的な王朝の暴君一族が君臨している。このピラミッドの頂点は贅沢で享楽的であり、サウリド社会の他の民の体験とは意図的にかけ離れたものとなっている。中間層は官僚、司祭、軍司令官の不健全な混ぜ合わせであり、彼らは国家統一の達成以来、内政、下層階級の取り締まり、貴重な官僚制度の維持を巡っていがみ合っている。このピラミッドの広大でごった返した下層は無数のサウリドの労働者階級で構成されており、その下にいるのが柔皮、暴君トカゲ人にとっての下等生物だ。これら全員が'''僭王'''/''The autarch''の絶対的支配の下に服従している。僭王はこの独裁政権のただ一人の指導者にして、神聖なる君主として崇められている。 | ||
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+ | ムラガンダの他の集団と比較すると、この独裁政権は工学や[[Wikipedia:ja:インフラストラクチャー|インフラ]]に関する信じられない芸当を行うことができる。彼らはすでに要塞都市の中に巨大な寺院を建設しており、そこからこの次元初の舗装道路が国家全域に伸びている。高架の[[カード名国語辞典#灌漑|灌漑]]用水路が高山の湖や貯水池や川からサウリドの土地へと水を供給し、その用水路で回る水車機関が工業用竪孔鉱山や製錬工場の動力源となっている。サウリドは完全な肉食性で、畑や穀倉ではなく、産業用牧場や食肉処理場、燻製工場、広大な地下塩蔵庫を維持管理している。独裁政権の支配下にある人間たちは、自らの食を満たすために、小さな区画で共有の野菜や穀物を栽培することを許されている。 | ||
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+ | サウリドはムラガンダの軟泥と密接な関係を保っており、軟泥のことを、亡き祖先の物理的で超自然的な残滓として崇拝している。彼らは特に[[擬態の原形質/The Mimeoplasm#ストーリー|擬態の原形質/The Mimeoplasm]]を、生き神とは言わないまでも、偉大な存在と見なしている。軟泥は喰らった存在を取り込み、その形へと変わる。そのためサウリドは、尊敬する古老たちが死を迎えると(あるいは臨終の床に就くと)、その者を軟泥に喰らわせる。その聖なるゼリーの中で永遠に生きられるように。 | ||
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+ | ===牙ドルイド/The Fang Druids=== | ||
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+ | ===テルーセット/The Telu-Set=== | ||
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+ | ===力線魔道士/Ley mages=== | ||
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+ | ===傷痕の妖術師/Scar witches=== | ||
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+ | ===暁を追う巡礼者/The Dawnchaser Pilgrims=== | ||
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+ | ===放浪の書記官/The Wandering Scribes=== | ||
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+ | ===軟泥/Ooze=== | ||
+ | [[ウーズ|'''軟泥'''(なんでい)/''Ooze'']]は、恐竜と並んでムラガンダを象徴する存在であり、既知の独立個体――[[擬態の原形質/The Mimeoplasm#ストーリー|擬態の原形質/The Mimeoplasm]]によって体現されている。ムラガンダの軟泥は奇妙な生物で、その起源については諸説ある。力線魔道士の仮説によれば、軟泥とはある種の次元抗体で、ムラガンダにおける魔法の誕生に反応してこの次元の深部で生まれたとされる。傷痕の妖術師の主張によれば、軟泥とは月の残滓たる存在で、最初の月の破片の落下とともにこの次元に降り注ぎ、その後の破片の落下のたびに再生しているという。サウリドの主張によれば、軟泥とは彼らが崇める祖先の生ける精髄であり、死後の世界の物質が融合した存在で、過去の神聖なる僭王たちの知恵を宿しているのだという。テルーセットの知るところによれば、軟泥とは恐怖や悪夢であり、ゆっくりと動く波のように押し寄せて寝ている子供をさらい、村を飲み込む飽くなき怪物である。牙ドルイドの見立てによれば、軟泥とは歩く耕作エンジンであり、奇妙で独特な植生の真の保管庫をその内に宿す、タイムカプセルのような[[カード名百科事典#テラリウム|テラリウム]]だ。 | ||
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+ | 軟泥の真の起源は、ムラガンダの最初の世界を終わらせ、この新しく活気に満ちた次元を広めた月の破片の落下の中で失われてしまった。現在、軟泥はムラガンダのあらゆる生物群系で見ることができ、その大きさは水滴大から歩く湖ほどのものまで多岐にわたる。それと同じく、その知性も多岐にわたる――軟泥は、喰らった生物の記憶に合わせて自らの形を変える容器なのだ。その中でも最も高い知能を持つのは、知的生命を喰らったものであり――通常、それは名誉ある生け贄となったサウリドや、不運に見舞われた人間だ――ゆっくりと消化した残骸と吸収した記憶を自らの存在に変え、喰らった存在を模倣することで初歩的な知性を示す。 | ||
==登場== | ==登場== | ||
===登場カード=== | ===登場カード=== | ||
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;[[プレインチェイス]] | ;[[プレインチェイス]] | ||
:[[餌場/Feeding Grounds (次元カード)]] | :[[餌場/Feeding Grounds (次元カード)]] | ||
+ | ;[[機械兵団の進軍]] | ||
+ | :[[ムラガンダへの侵攻/Invasion of Muraganda]] | ||
− | === | + | ===[[カード名]]に登場=== |
− | *[https://web.archive.org/web/20070924133929/http://www.wizards.com/default.asp?x=magic/futuresight2/lexicon Lexicon of the Future(Internet Archive)] - | + | ;[[未来予知]] |
− | *[https://magic.wizards.com/en/ | + | :[[ムラガンダの印刻/Muraganda Petroglyphs]] |
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+ | ===[[フレイバー・テキスト]]に登場=== | ||
+ | ;[[未来予知]] | ||
+ | :[[放漫トカゲ/Imperiosaur]] | ||
+ | ;[[ホリデーギフトカード]] | ||
+ | :[[Eggnogger's 'Stache]] | ||
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+ | ===登場作品・登場記事=== | ||
+ | ;[[未来予知]] | ||
+ | *[https://web.archive.org/web/20070924133929/http://www.wizards.com/default.asp?x=magic/futuresight2/lexicon Lexicon of the Future(Internet Archive)] - 公式記事。未来予知の語句解説 | ||
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+ | ;[[プレインチェイス]] | ||
+ | *[https://magic.wizards.com/en/news/feature/planes-planechase-2009-12-30 The Planes of Planechase](Savor the Flavor [[2009年]]12月30日 [[Doug Beyer]]著) - [[次元]][[カード]]解説 | ||
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+ | ;[[統率者 (カードセット)|統率者]] | ||
*[[貪食と増強/Devour for Power]]付属のデッキ戦略ガイド | *[[貪食と増強/Devour for Power]]付属のデッキ戦略ガイド | ||
+ | *[https://web.archive.org/web/20220116214156/https://magic.wizards.com/en/articles/archive/savor-flavor/fifteen-commanders-fifteen-tales-2011-06-22 Fifteen Commanders, Fifteen Tales(Internet Archive)]/[https://mtg-jp.com/reading/translated/0003969/ 15の統率者、15の物語](Savor the Flavor [[2011年]]6月22日 Doug Beyer著) | ||
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+ | ;[[機械兵団の進軍]] | ||
+ | *[https://magic.wizards.com/en/news/making-magic/choosing-your-battles-part-2 Choosing Your Battles, Part 2]/[https://mtg-jp.com/reading/mm/0036853/ バトルを選べ その2]([[Making Magic]] [[2023年]]4月18日 [[Mark Rosewater]]著) | ||
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+ | ;[[霊気走破]] | ||
+ | *[https://magic.wizards.com/en/news/feature/planeswalkers-guide-to-aetherdrift-part-2 Planeswalker's Guide to Aetherdrift, Part 2]/[https://mtg-jp.com/reading/translated/0038308/ プレインズウォーカーのための『霊気走破』案内 その2]([[Daily MTG]] [[2024年]]12月11日 [[Miguel Lopez]]著) | ||
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+ | ==その他== | ||
+ | *モチーフは[[Wikipedia:ja:先史時代|先史時代]](人類が文字を使用する前の時代)。洞窟壁画や[[カード名百科事典#マンモス|マンモス]]に加え、実際には人類と同じ時代の生物ではないが古さを感じさせる[[恐竜]]などがその要素に当たる。 | ||
+ | *初出は[[未来予知]]で、[[マジック:ザ・ギャザリング|マジック]]の未来を垣間見せるこの[[カード・セット|セット]]の性質上、先行登場とも言える。この時点では「恐竜や洞窟壁画が存在する先史時代風の次元」ということしか分からなかった。[[統率者 (カードセット)|統率者]]では、軟泥([[ウーズ]])の存在が示されるとともに、「牙のドルイド/The fang druids」「蜥蜴人の戦士/The saurid warriors」「傷魔女/The scarwitches」などの集団に言及された。その後、[[霊気走破]]で舞台の一つとなり、既出の要素や用語も拾い上げる形で詳細な背景設定が行われた。 | ||
==参考== | ==参考== | ||
*[[次元/Plane]] | *[[次元/Plane]] | ||
*[[次元一覧]] | *[[次元一覧]] | ||
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*[[背景世界/ストーリー用語]] | *[[背景世界/ストーリー用語]] |
2025年1月8日 (水) 23:20時点における最新版
ムラガンダ/Muragandaは、多元宇宙/Multiverseに存在する次元/Planeの一つ。初出は未来予知で、プレインチェイス、統率者(貪食と増強/Devour for Power)、機械兵団の進軍でも世界の様子を垣間見せた。霊気走破で舞台の一つとなり、本格的な登場を果たした。
目次 |
[編集] 解説
ムラガンダは生命と自然のままの魔法に溢れる、原始的な次元だ。とはいえ、ずっとそうだったわけではない。遠い過去のある時点で――今を生きる者の記憶にはないが、生存者が彫り、その子孫が維持してきた印刻が記録するところによれば――ムラガンダ全土を支配する次元規模の文明が魔法を発見し、その後崩壊したのだ。この次元の月は粉々に砕け散り、今日に至るまで破片が降り注いでいる。
月の破片の落下が沈静化し、生存者たちが集団や部族や王国を形成するにつれて、ムラガンダは何世代にもわたって変わり続けてきた。月の破片の落下、軟泥/Ooze、文明崩壊時に解き放たれた自然のままの魔法、その他多くの最初の惨禍の余波のために、ムラガンダは今日見られる姿となった――緑豊かな密林、凶暴な生命、狩り尽くされた遺跡、自然のままの容赦なき風景から成る、活気に満ち、力強く、原始的な次元だ。かつてこの次元を支配していた古き文明の面影は寂れた遺跡の中に見ることができるが、それらはほとんど埋もれてしまっている。新たな文化や文明が魔法を全力で使うすべを再び学んだ、この次元の新しく原始的な時代の下に。
[編集] イベント
[編集] ギラプール・グランプリ
ムラガンダはアヴィシュカー/Avishkar、アモンケット/Amonkhetとともに、ギラプール・グランプリ/The Ghirapur Grand Prixの第二回大会の舞台となった。
グランプリのムラガンダ横断ステージは、選手たちが経験する中でおそらく最も危険なものとなるだろう。その風景を特徴づけるのは、露出した力線や月の破片や噴火する火山にざわめく荒々しく進化し続ける地形、既知あるいは未知の巨大な野生生物、好奇心旺盛な現地の文化だ。この次元はアモンケットが同意したようにはレースを受け入れておらず、肉体が感染症を攻撃するかのような反応を続けている。
レース開始の一年前、アヴィシュカーからムラガンダに先遣隊が派遣された。この遠征隊は四部門(外交、建設、保守、保安)に分かれており、ムラガンダじゅうで――時には文字通りに――道を切り拓き、自然界を動揺させた。アヴィシュカー代表団は支配勢力であるサウリド独裁政権/The Saurid Autocracyから、建設用地がそうしてよい場所であるとの保証を得ていたものの、外交チームが結んだ条約は地図上の条約に過ぎず、地形や獣や軟泥、そこに住む無数の集団との条約ではないことを、保安チームと保守チームは突き止めた。実際、この独裁政権がアヴィシュカーと結んだ協定は、幾分か巧妙な政治的策謀だった。その地役権と協定を利用して、独裁政権はレースのルートに沿って自らの国境を押し広げ、インフラと技術の交流を確保し、この次元の「代弁者」としての主要な地位を確立したのだ。とはいえアヴィシュカーは最近、最も強大な魔道士集団との交渉においてゆっくりとではあるが着実な外交的進展を見せており、最初の協定における特定の欠陥を突き止めることは確実だ。
ムラガンダでのレースは、この次元の最も美しく最も容赦ない環境を巡る浮かれ騒ぎのツアーに出場チームを連れていく。珊瑚礁の穴や天を突く間欠泉の上に吊るされた危険なコースから、古の密林の緑壁を突き抜ける狭い森の回廊まで、ギラプール・グランプリのムラガンダ・パートはそれまでにないほど選手たちを試すことになる。アモンケットの呪われし広大な砂地も、彼らにとっては夢のように思えることだろう。ここムラガンダで選手たちが出会うのは、歩く世界の軟泥、自然のままの魔法で歪められた恐竜、そしてサウリド独裁政権が受諾した条約の条項には署名も同意もしていない恐れ知らずの略奪者たちだ。
[編集] 組織
ムラガンダは自然のままの生命で満ちた原始的な次元かもしれないが、他の次元と同じように文明は育っている。ムラガンダでは人型種族が隆盛し、その祖先が魔法や金属を見出して以来初めて権力を手にしている。サウリド/Sauridは密林に刃を振るい、荒野から王国を切り拓いている。他の組織形態――ドルイドの修道院、魔道士団、死せる神を崇める都市教団、内部異邦人の次元循環国家――も権力を競い合っている。ムラガンダの文明は、この次元の特徴たる凶暴な生命と同じように、原始的で残忍で勝者総取りである。
[編集] サウリド独裁政権/The Saurid Autocracy
この次元で最も強大な国家はサウリド独裁政権/The Saurid Autocracyという名の王国で、サウリド/Saurid――恐竜の人型種族――と、サウリドが柔皮/Softskinと呼ぶ人間/Humanの臣民から成る。サウリド社会は厳格なカースト区分によって階層化されており、広大で入り組んだ社会ピラミッドの頂点に、支配的な王朝の暴君一族が君臨している。このピラミッドの頂点は贅沢で享楽的であり、サウリド社会の他の民の体験とは意図的にかけ離れたものとなっている。中間層は官僚、司祭、軍司令官の不健全な混ぜ合わせであり、彼らは国家統一の達成以来、内政、下層階級の取り締まり、貴重な官僚制度の維持を巡っていがみ合っている。このピラミッドの広大でごった返した下層は無数のサウリドの労働者階級で構成されており、その下にいるのが柔皮、暴君トカゲ人にとっての下等生物だ。これら全員が僭王/The autarchの絶対的支配の下に服従している。僭王はこの独裁政権のただ一人の指導者にして、神聖なる君主として崇められている。
ムラガンダの他の集団と比較すると、この独裁政権は工学やインフラに関する信じられない芸当を行うことができる。彼らはすでに要塞都市の中に巨大な寺院を建設しており、そこからこの次元初の舗装道路が国家全域に伸びている。高架の灌漑用水路が高山の湖や貯水池や川からサウリドの土地へと水を供給し、その用水路で回る水車機関が工業用竪孔鉱山や製錬工場の動力源となっている。サウリドは完全な肉食性で、畑や穀倉ではなく、産業用牧場や食肉処理場、燻製工場、広大な地下塩蔵庫を維持管理している。独裁政権の支配下にある人間たちは、自らの食を満たすために、小さな区画で共有の野菜や穀物を栽培することを許されている。
サウリドはムラガンダの軟泥と密接な関係を保っており、軟泥のことを、亡き祖先の物理的で超自然的な残滓として崇拝している。彼らは特に擬態の原形質/The Mimeoplasmを、生き神とは言わないまでも、偉大な存在と見なしている。軟泥は喰らった存在を取り込み、その形へと変わる。そのためサウリドは、尊敬する古老たちが死を迎えると(あるいは臨終の床に就くと)、その者を軟泥に喰らわせる。その聖なるゼリーの中で永遠に生きられるように。
[編集] 種族
[編集] 軟泥/Ooze
軟泥(なんでい)/Oozeは、恐竜と並んでムラガンダを象徴する存在であり、既知の独立個体――擬態の原形質/The Mimeoplasmによって体現されている。ムラガンダの軟泥は奇妙な生物で、その起源については諸説ある。力線魔道士の仮説によれば、軟泥とはある種の次元抗体で、ムラガンダにおける魔法の誕生に反応してこの次元の深部で生まれたとされる。傷痕の妖術師の主張によれば、軟泥とは月の残滓たる存在で、最初の月の破片の落下とともにこの次元に降り注ぎ、その後の破片の落下のたびに再生しているという。サウリドの主張によれば、軟泥とは彼らが崇める祖先の生ける精髄であり、死後の世界の物質が融合した存在で、過去の神聖なる僭王たちの知恵を宿しているのだという。テルーセットの知るところによれば、軟泥とは恐怖や悪夢であり、ゆっくりと動く波のように押し寄せて寝ている子供をさらい、村を飲み込む飽くなき怪物である。牙ドルイドの見立てによれば、軟泥とは歩く耕作エンジンであり、奇妙で独特な植生の真の保管庫をその内に宿す、タイムカプセルのようなテラリウムだ。
軟泥の真の起源は、ムラガンダの最初の世界を終わらせ、この新しく活気に満ちた次元を広めた月の破片の落下の中で失われてしまった。現在、軟泥はムラガンダのあらゆる生物群系で見ることができ、その大きさは水滴大から歩く湖ほどのものまで多岐にわたる。それと同じく、その知性も多岐にわたる――軟泥は、喰らった生物の記憶に合わせて自らの形を変える容器なのだ。その中でも最も高い知能を持つのは、知的生命を喰らったものであり――通常、それは名誉ある生け贄となったサウリドや、不運に見舞われた人間だ――ゆっくりと消化した残骸と吸収した記憶を自らの存在に変え、喰らった存在を模倣することで初歩的な知性を示す。
[編集] 登場
[編集] 登場カード
[編集] カード名に登場
[編集] フレイバー・テキストに登場
[編集] 登場作品・登場記事
- Lexicon of the Future(Internet Archive) - 公式記事。未来予知の語句解説
- The Planes of Planechase(Savor the Flavor 2009年12月30日 Doug Beyer著) - 次元カード解説
- 貪食と増強/Devour for Power付属のデッキ戦略ガイド
- Fifteen Commanders, Fifteen Tales(Internet Archive)/15の統率者、15の物語(Savor the Flavor 2011年6月22日 Doug Beyer著)
- Planeswalker's Guide to Aetherdrift, Part 2/プレインズウォーカーのための『霊気走破』案内 その2(Daily MTG 2024年12月11日 Miguel Lopez著)
[編集] その他
- モチーフは先史時代(人類が文字を使用する前の時代)。洞窟壁画やマンモスに加え、実際には人類と同じ時代の生物ではないが古さを感じさせる恐竜などがその要素に当たる。
- 初出は未来予知で、マジックの未来を垣間見せるこのセットの性質上、先行登場とも言える。この時点では「恐竜や洞窟壁画が存在する先史時代風の次元」ということしか分からなかった。統率者では、軟泥(ウーズ)の存在が示されるとともに、「牙のドルイド/The fang druids」「蜥蜴人の戦士/The saurid warriors」「傷魔女/The scarwitches」などの集団に言及された。その後、霊気走破で舞台の一つとなり、既出の要素や用語も拾い上げる形で詳細な背景設定が行われた。