死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman
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ゴルガリ団/The Golgariらしく墓地にあるカードをリソースとした能力を持つ、1マナ混成クリーチャー。
幅広いカード・タイプに対応し、自分の墓地だけでなく対戦相手の墓地のカードも追放できるため、中盤から後半ならば能力の対象に困ることもないだろう。2点のライフロスとライフ回復によりダメージレースを補助しつつ墓地対策としても利用できると、1マナ域のクリーチャーとしては非常に器用である。
フェッチランドのある環境ではマナ加速手段としても強力。これを1マナのマナ・クリーチャーにカウントしてマナカーブを調整するのであれば、序盤の安定性のためにフェッチランドは多めに投入しておくことが望ましい。一方スタンダードでは進化する未開地/Evolving Wildsくらいしかよい相方がいないため、墓地を肥やすデッキでもない限り1番目の能力は扱いにくい面がある。
マナ・クリーチャーとしては癖があるものの、緑マナを必要としない点や、マナ・クリーチャーにありがちなマナ基盤が整った後に手札にきて腐るということがないのも大きな強み。
また、1マナでありながらタフネスが2であるため、電謀/Electrickeryやゴルガリの魔除け/Golgari Charmで一掃されないことも嬉しい。部族の恩恵を受けやすいエルフであることも見逃せないメリット。
モダンではトップメタのジャンドをさらに強化した。ジャンドの最大の欠点であるマナ基盤をがっちり補強でき、また中盤以降は削り役にも回れるため無駄になることがない。自分のタルモゴイフ/Tarmogoyfとの僅かなディスシナジーこそあるものの、3ターン目血編み髪のエルフ/Bloodbraid Elfから一気に攻め込んだり、闇の腹心/Dark Confidantのためにライフを供給したり、対戦相手の瞬唱の魔道士/Snapcaster Mageや台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finksを妨害したりと攻防に活躍した。それ以外にもアブザンなどでも採用された。
レガシーでも広く採用された。不毛の大地/Wastelandやフェッチランドなど土地が墓地に落ちることが多い環境であるためマナ加速能力を申し分なく利用でき、早い段階から聖遺の騎士/Knight of the Reliquary、ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil、精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptorなどのパワーカードを唱えることが可能となる。また環境柄墓地を利用・参照するデッキが多いため、「メインデッキから採用できる腐らない墓地対策カード」という特徴がメタゲーム上で意味するところは大きい。これが流行したせいで赤緑系デッキが罰する火/Punishing Fire+燃え柳の木立ち/Grove of the Burnwillowsを搭載することが増えるなど、環境に大きな影響を与えていた。ヴィンテージにおいても色拘束の厳しいトレストの使者、レオヴォルド/Leovold, Emissary of TrestなどをMoxを絡めて2ターン目に出したり、闇の腹心/Dark Confidantを出しつつ打ち消しを構えるなどの活躍をしている。もちろん墓地対策としての能力も活用される。
リミテッドでも1発の除去やコンバット・トリックから4点分のライフ・アドバンテージを得られるなど、システムクリーチャーとして悪くない働きをする。自分の墓地のクリーチャーを利用する場合、同じ黒緑のメカニズムである活用と競合してしまうのは惜しいところだが、逆にミラーマッチでは活用対策になる。
- 色は全く異なるが、墓地のカードを追放してライフを削る1マナクリーチャーというのは渋面の溶岩使い/Grim Lavamancerを連想させる。Zac Hillはこのカードの強さを端的に"Birds of Lavamancer"と表現した[1]。能力全部を合わせて漁る渋面の極楽鳥などと呼ばれることも。
禁止指定
2014年2月7日(2月3日告知)より、モダンで禁止カードに指定された。これは、死儀礼のシャーマンの存在が黒緑系の消耗戦を得意とするデッキを後押しし、シナジーを利用して戦うデッキが活躍しづらい環境になっている状況を改善することが目的。本来マナ加速カードは序盤にしか役立たないものだが、死儀礼のシャーマンは終盤まで役に立つカードであるために採用しやすいことがこの状況を作り出している原因とされた[2]。
2018年7月6日(7月2日告知)より、レガシーでも禁止カードに指定された。長期間にわたって高い勝率を維持しているグリクシス・デルバーに高い柔軟性とマナ基盤、リスクの少ない墓地対策を提供し、青をベースとした非コンボデッキが死儀礼のシャーマンを軸に強力なカードを使うという方向で固まってしまい、多様性が失われている状況が問題とされた[3]。
- 環境に存在する除去が極めて強力なレガシーにおいて、クリーチャーの禁止は非常に珍しい。ゴブリン徴募兵/Goblin Recruiter・隠遁ドルイド/Hermit Druid・金属細工師/Metalworker(2009年10月1日禁止解除)・世界喰らいのドラゴン/Worldgorger Dragon(2015年1月23日禁止解除)の4枚が禁止指定された2004年9月20日のフォーマット設立以来実に13年10ヶ月ぶりの出来事であり、無論カード・タイプとして追加禁止指定がなされたのも初めてである。
- なおこれ以降は夢の巣のルールス/Lurrus of the Dream-Den、黎明起こし、ザーダ/Zirda, the Dawnwaker、戦慄衆の秘儀術師/Dreadhorde Arcanist…とクリーチャーの禁止カードは頻出している。レガシーの有する膨大なカードプールとの組み合わせの妙で禁止指定を免れなかったという事情も存在するものの、近年におけるクリーチャーのカードパワーの上昇を感じさせる一端と言えよう。
ルール
- いずれの能力も、墓地のカードを追放するのはコストではなく効果の一部である。
- 1つ目の能力は対象を取るのでマナ能力ではない。インスタント・タイミングでのみ起動でき、スタックに乗って解決を待つ。また上記のように立ち消えることもある。
開発秘話
「ゴミを有用なものに作り変えるラヴニカ/Ravnicaの市民」というフレイバーから、Shawn Mainによりトップダウン式にデザインされたカード。最終的にはゴルガリ団のシャーマンとしてのフレイバーになった。混成カードにすることで1マナでありながらP/Tが1/2の多色にするという「少しばかりのズル」を活かすべく、1つの能力だけを利用しても良いような汎用性のある能力が設定され、非常に強力でフレイバーに富んだカードが出来上がった。1つ目の能力は理論上両方の色に属する能力であるマナ加速が選ばれ、他の2つはそれぞれの色にしかできず互いが鏡映しになるライフロスとライフ回復が選ばれた。
追放するカードは制限しないことも検討されたが、1マナクリーチャーでそのデザインでは少しばかり強すぎたため、それぞれの能力でフレイバー的にもふさわしい制限がかけられることになった。調整の結果、マナ加速では序盤から墓地に置くことが難しくセーフガードとして働く土地を、ライフ回復では一番多く起動されることを意図した最も安全な能力であることからクリーチャーを、ライフロスでは墓地に一番よく置かれるカード・タイプであるソーサリーとインスタントを追放することにされた。
- こうした調整によってスタンダードでは至って適正なカードとして出来上がったが、1マナであることの価値が絶大なうえ土地が簡単に墓地に置かれるモダンやレガシーではあまりに強力なカードになってしまった。
脚注
- ↑ Top 5 Cards of Pro Tour Return to Ravnica(2012年10月21日 Ray Walkinshaw著)
- ↑ February 3, 2014, DCI Banned & Restricted List Announcement/2014年2月3日 DCI禁止制限カードリスト告知(Top Decks 2014年2月3日 Erik Lauer著)
- ↑ July 2, 2018 Banned and Restricted Update/2018年7月2日 禁止制限告知(News 2018年7月2日 Ian Duke著)
参考
- The Rite Stuff/死儀礼の素質(DailyMTG.com、ReConstructed、文:Gavin Verhey、訳:三輪祐介)
- 金のように(Making Magic 2018年9月4日)
- 墓地対策カード
- マナを生み出すがマナ能力でないカード
- カード個別評価:ラヴニカへの回帰 - レア
- カード個別評価:エターナルマスターズ - レア