セラの領土/Serra's Realm
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セラの領土/Serra's Realmは次元/Planeの1つ。ウルザ・ブロックの舞台として登場し、次元の誕生からファイレクシア/Phyrexiaとの戦争を経て、次元が崩壊し、住民がドミナリア/Dominariaに入植するまでが語られた。
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解説
果てない天空と雲の海に島や大陸が浮遊し、天使が舞い、敬虔な人々が住む楽園のような世界。プレインズウォーカー/Planeswalkerのセラ/Serraが白マナから創造した人工次元である。次元全体が日の昇りきらない永遠の夜明けのような様相を呈していて、一面の空や雲は陽光を受けて黄金色に広がり、天頂に近づくにつれ青みを帯びた空から暗い夜空となる。
空気自体に滋養があるため生き物は食物を摂る必要がなく、飢えを満たすのに他者の命を奪うこともない。ただし、食べる必要がないため捕食生物が存在しないというものの、ベリーの木には外敵から守るように棘が生えて、ザンチャ/Xantchaを不思議がらせた。
地名
セラの聖域
この次元の中心地は創造主セラの住むセラ宮殿/Serra's Palaceである(イラスト1、イラスト2、イラスト3)。この巨大建造物とその周辺はセラの聖域/Serra's Sanctumと呼ばれ、カード化もされている(→詳細はセラの聖域/Serra's Sanctum (ストーリー)参照)。
その他の地域
空中に漂う島々が無数に存在し、一定のリズムと軌道に乗って移動していて、その中には居住区や町、都市が築かれているものもある(イラスト1、イラスト2、イラスト3、イラスト4)。
小説Time Streamsでは、最果ての浮遊島Jobboc(ジョボク)とその入植地Arizon(アリゾン)、が登場している。そこはセラ人の難民の集結地点となり、救出に来たウェザーライト/Weatherlight号の一団とレイディアント/Radiant軍との決戦場となった。その他の小説などを見ても、これ以外の地名は明かされていない。
住人と動植物
住人はセラを信奉するセラの天使と人間で、併せてSerran(セラ人)とも呼ばれる。この次元では人間の誕生はまれであり、子どもは幼いうちから次元の創造主セラの教えを受けて、法や協調を尊ぶ敬虔な人物に成長する。
その他の動植物は、浮遊する島々に草原や林などの植物が生えている他、空を飛ぶグリフィンとペガサスの姿も見られる。
白マナが支配する環境は、他次元の生き物に影響を与える場合がある。この次元に滞在した際のザンチャの様子を見ると、黒マナ主体のファイレクシア人は普通通りに行動することはできず、動きは緩慢に、思考は鈍くなる。反対に白マナに近いウルザ/Urzaは生き生きとしていた。
人工次元の宿命
5年間セラの領土に滞在し観察したウルザによると、人工次元であるセラの領土には致命的な欠陥があり、遅かれ早かれ自壊する運命にある、という。
白マナから構成されるこの世界では、黒マナが入り込むと世界のバランスが乱されてしまい、浮遊する島が軌道をそれて衝突したり、落下してしまうなどの現象が起こる他、住人の精神や肉体にも多大な悪影響を与えてしまう。そのため、大天使たちセラ人は汚染を発見すると速やかに発生源を処分する。セラ人はなによりもまず女神セラに汚れを近づけないように常に注意を払っている。
- ザンチャは食事不要の特殊な環境などが魔法的であり、故郷ファイレクシア同様にセラの領土は天然の世界とは違うと指摘している。
ファイレクシア
ファイレクシアはセラの領土と同じ人工次元だが、黒マナを主体とする正反対の存在である。
この相反する2次元がかかわり合った際、当然のように戦争が勃発した。発端はウルザを追跡するファイレクシア人がセラの領土に侵入したことであり、セラの領土は戦火に包まれてしまう。最終的にファイレクシアの侵攻軍は撤退することになるが、多くのセラ人の命が奪われ、中には捕虜となって連れ去られた者もいた。
敵軍はいなくなったが、土地や町は破壊され荒廃しており、次元全体に黒マナの汚染が広がってしまった。ファイレクシアのぎらぎら光る油が大気中にすら残留し、ファイレクシアの潜伏工作員/Sleeper Agentがセラ人に紛れている状況。黒マナの汚れを拭い去ることは不可能であり、人工次元の不安定さを悟ったセラは2500AR、失われた楽園を嘆いてこの次元を去っていった。
- ファイレクシア侵攻軍は、掌編追憶の時/A Time for Remembranceではギックスの手先(minion)、小説Time Streamsではギックス/Gix自身とデーモン、掌編遺産の傷/Scars of Legacyでは抹殺者/Negatorとなっている。
- Urza's Saga Backstoryや迫害/Persecuteのフレイバー・テキストの情報から、ファイレクシアが撤退するまでに捕虜になったセラ人が存在し、その中には天使のセレニア/Seleniaが含まれていることが分かる。
- Urza's Saga Backstoryではファイレクシアとの戦いは短期間であったとされ、ファイレクシアは標的のウルザが既にセラの領土にいないことを知って撤退したとされる。
人工次元の終焉
AR34世紀、破壊の傷跡は未だ癒えずに残され、要塞化された宮殿には軍靴と武具を鍛える音が響き、大気は汚されて空は灰色と黄色にくすんでいた。
この時代、レイディアントは人間のゴーリグ/Gorigを軍事アドバイザーとして重用している。彼女とゴーリグのCleansing Army(浄化軍)は、特殊な松明Soul Torchを用いてファイレクシア人を探り出し、疑わしい者をその他の住民もろともに虐殺している。これは潜伏工作員などファイレクシアの汚染源を根絶するための強硬策であったのだが、セラ人の命が失われるごとに人工次元の崩壊は逆に進行している状況。実は、ゴーリグの正体はファイレクシアの工作員であり、レイディアントを欺いて同士討ちをさせ、セラの領土と住人から白マナを奪って収集し、体内のSoul Batteryに貯蔵していたのだった。
結局、ファイレクシアとの戦争とレイディアントの統治時代を経て、次元の汚染と縮小は加速度的に進んでいった。3360AR、セラの領土は完全に崩壊する前にパワーストーン/Powerstoneに収められ、ウェザーライトの次元移動機関の動力源となった。
こうしてウルザの指摘した人工次元の欠点は実証された。とはいえ、ウルザの到来がこの次元にファイレクシアを招き寄せることに繋がり、次元の崩壊を加速させたこともまた事実であった。 余談ではあるが、後に別の人工次元も生み出された。こちらも機械と金属を用いて統一した結果、究極的汚染を果たしてしまう。やはり人工次元には致命的な欠陥があるのだろうか。
エピソード
ウルザズ・サーガ (1)
ウルザズ・サーガでは、2500ARまでのセラの領土の状況を扱っている。
カードで触れられている内容は、次元の誕生から始まり、世界の様子や住人、社会、魔法の性質が描かれ、ウルザとザンチャが滞在した5年間、ファイレクシア人による侵攻と汚染、セラとレイディアント/Radiantの意見衝突などを経て、セラが次元を離れるまでとなっている。
Planeswalker
小説Planeswalkerでは、ウルザとザンチャが滞留した5年間の内でも最後のごく短い期間が記されている。
病めるウルザはセラ宮殿で5年間の治療と休息をとり健康を取り戻す。一方、意識不明のザンチャは宮殿から離れた浮遊島に口数の少ない付添人の修道女Sosinna(ソシンナ)と2人で隔離された。宮殿の強烈な白マナは黒マナを命の源とするザンチャにとって致命的であるとともに、宮殿に黒マナの汚染を近づかせないためでもある。
目覚めたザンチャは浮遊島から脱出するために黒マナを用いる。異変を察知した大天使一団はザンチャとソシンナを宮殿に連れてくる。ザンチャはウルザと再会を果たすが、ソシンナはザンチャの黒マナに侵されてしまっており、宮殿の繭で永遠の眠りに就いた。
ウルザとザンチャはセラの領土とファイレクシアが同じ人工次元であるという点に着目し、ヨーグモス/Yawgmothの起源にこそファイレクシア打倒の鍵があると推論、答えを求め別の次元へと出発した(この時点ではファイレクシア人の起源がドミナリアとは知らない。その後のウルザとザンチャについてはGastal(ガスタル)とエクィロー/Equilorを参照)。
ウルザズ・サーガ (2)
掌編追憶の時/A Time for RemembranceやUrza's Saga Backstory、小説Time Streams、掌編遺産の傷/Scars of Legacyでは、小説Planeswalker後の状況が語られている。
ウルザが旅立ってほどなくして、ギックスの手先がウルザの痕跡を追ってセラの領土に辿り着いた。ファイレクシア人はこの次元に侵入し、怒りの矛先をウルザからセラの住人に変えて解き放ち、戦争状態となった。数世紀後の2500AR、セラは世界を覆った汚染を嘆いて、この次元を離れていった。
ウルザズ・レガシー
ウルザズ・レガシーは3346~3360ARまでの状況を扱っている。
セラが不在となって8世紀余り、これまでの期間は大天使レイディアントがセラに代わって次元を統治してきたが、次元の復興とファイレクシアの排除に対するレイディアントの熱意は、彼女を独裁とパラノイアへと傾倒させていった。
ウルザズ・レガシーでは、ファイレクシアの工作員ゴーリグにそそのかされたレイディアントの狂気、セラ人同士の戦闘状態、ウルザたちとセラの天使軍の決戦、そしてセラの領土の終焉が描かれている。
Time Streams
小説Time Streamsでは、ウルザズ・レガシー終盤のセラの領土が詳しく描写されている。
ウェザーライトの動力源を求めるウルザはセラの領土を再訪する。そこで戦争の残した深い傷跡を目の当たりにし、更にレイディアントの独裁と虐殺行為、所在は不明だが潜伏するファイレクシア人の存在を知る。ウルザはレイディアントに対して、次元の住人を(潜伏工作員の可能性も含めて)難民として引き取る代わりに、ファイレクシアと闘う仲間になり、セラの領土自体を動力源として提供するようにと提案をする。故郷の復興が至上目的であり、ウルザを災厄の原因と考えるレイディアントは当然、この提案を拒否しウルザを追い返す。
しかし、ウルザは密かに住民を救出しドミナリアへの搬送を開始する。そして3360AR、アリゾン居住区においてウルザとレイディアントの両陣営は戦闘状態に突入。艦長ジョイラ/Jhoiraが指揮するウェザーライト号や大魔術師バリン/Barrin、ドラゴンのデアリガズ/Darigaaz親子らを中核としたウルザ側は、天使の軍団を迎え撃つ。
レイディアントはウルザの両目からパワーストーンを抉り取ってセラ宮殿に帰還。ウルザの目を次元再生に利用しようとするが目の魔力を制御できず、宮殿と共に爆発に呑み込まれ死亡する。一方、ゴーリグは正体を現しデーモンのような怪物となって戦場の混乱を拡大させていたが、バリンの命令の光/Ray of Commandによって操られ、体内に蓄えたマナをウェザーライトの動力炉に充填して果てる。
戦闘は終結し、セラの領土はパワーストーンに封じ込められ、生存者はドミナリアへと避難した。
ウルザズ・デスティニー
難民となったセラ人はベナリア/Benaliaに入植。白と黒のマナに親和性を備えた血筋は後のキャパシェン/Capashen一族へと繋がることになる。ウルザズ・デスティニーのカードや小説Bloodlinesに難民とその後の姿を見ることができる。
Scourge
小説Scourgeでは、セラと領土が復活して再登場する。
4306AR、ドミナリアを離れ安息の地を求めるカローナ/Karonaはセラの領土に辿り着いた。この時代には、世界は最初にウルザが訪れた頃の姿を取り戻していた。セラが語るところによると、4205ARのウェザーライト号の破壊を機に動力源となっていたセラの領土は解放され、それから1世紀かけてセラは次元の復興に力を尽くしてきたという。定住を希望するカローナだったが、セラに拒絶されドミナリアに帰還した。
次元の混乱
次元の混乱では、別の歴史を辿る平行世界に登場した。Backwards Through the Looking Glassによると、セラ/Serraは白ではなく青のスフィンクスのプレインズウォーカーであり、正義の戦いよりも未来の予知に秀でている。そして、セラの領土には天使に代わってセラのスフィンクス/Serra Sphinxが住み、マナの蓄えられた池から洞察力を得るという。
Planechase
Planechaseには次元カードのセラの聖所/Sanctum of Serraがある。イラストには次元崩壊の兆候が現れていないが、どの時代のセラの領土をカード化したのかは不明である。
登場
登場カード
ウルザ・ブロックのほとんどの白のカードと、いくつかの白でないカードはセラの領土に関連している。
以下は、セラの領土の地勢や建物をカード化したもの。この他のカードのイラストに描かれている場合もある。
- ウルザズ・サーガ
- 漂う牧草地/Drifting Meadow、平地/Plains(4種)、セラの聖域/Serra's Sanctum
- ウルザズ・レガシー
- 近づきがたい監視塔/Forbidding Watchtower
- Planechase
- セラの聖所/Sanctum of Serra (次元カード)
フレイバー・テキストに登場
- ウルザズ・サーガ
- 絶対の優雅/Absolute Grace、水晶のチャイム/Crystal Chimes
- ウルザズ・レガシー
- オパールの報復者/Opal Avenger(日本語版では訳出されず)、平穏無事/Peace and Quiet、世界を支える者/Sustainer of the Realm(カード名にも)
- ウルザズ・デスティニー
- 遺宝安置所の修道士/Reliquary Monk
- 次元の混乱
- セラのスフィンクス/Serra Sphinx
登場作品
- Planeswalker(小説)
- 追憶の時/A Time for Remembrance(掌編)
- Time Streams(小説)
- 遺産の傷/Scars of Legacy(掌編)
- Bloodlines(小説。セラの領土の崩壊について簡単に説明された他、難民のその後が語られる)
- ファイレクシアの解剖/Phyrexian Autopsy(掌編。軽く触れられた程度)
- Scourge(小説)
登場記事
- Urza's Saga Backstory(ウルザズ・サーガのストーリー)
- Urza's Legacy Backstory(ウルザズ・レガシーのストーリー。文:Scott McGough)
- Urza's Destiny Backstory(ウルザズ・デスティニーのストーリー。難民について触れている。文:Scott McGough)
- Backwards Through the Looking Glass(次元の混乱の平行世界について。Doug Beyer、2007/3/1)
- The Known Mutliverse(Brady Dommermuthによる次元解説。2008/5/19)
- The Planes of Planechase(Doug Beyerによる次元カードの解説。2009/9/2)
訳語
「(Serra's) Realm」はウルザズ・サーガの絶対の優雅/Absolute Graceと水晶のチャイム/Crystal Chimesのフレイバー・テキストで「(セラの)国」と訳されたが、ウルザズ・レガシーの平穏無事/Peace and Quietのフレイバー・テキストと世界を支える者/Sustainer of the Realmのカード名、ウルザズ・デスティニーの遺宝安置所の修道士/Reliquary Monkのフレイバー・テキストでは「(セラの)世界」に変更された(ウルザズ・レガシーのオパールの報復者/Opal Avengerのフレイバー・テキストにも登場するが日本語版では訳出されていない)。
同時期の公式ハンドブックに収められた各掌編を見ると、追憶の時/A Time for Remembranceでは「セラの王国」または「セラの世界」、遺産の傷/Scars of Legacyでは「セラの世界」または「セラの次元」、ファイレクシアの解剖/Phyrexian Autopsyでは「セラの王国」と訳されており、カード上の翻訳と一致しないばかりか同一掌編中でも翻訳に揺らぎがある。
その後、次元の混乱のセラのスフィンクス/Serra Sphinxのフレイバー・テキストで再び「セラの国」に戻される。「セラの領土」はPlanechaseのセラの聖所/Sanctum of Serraの次元タイプで新たに充てられた5番目の訳語である。
その他
ウルグローサ/Ulgrothaはセラの領土と同じくセラが居住した次元であることから、ファンの中で両者が取り違えられることがある。これは日本に限らず海外でも見られる誤りである。